明治時代の東京下町・大音寺前を舞台にした青春小説。吉原遊郭に隣接する貧しい町に住む子供たちの、初恋と別れを描いた名作である。
主人公は大黒屋の美しい少女・美登利。姉が遊女として身を売ったため一家でこの町に移り住み、やがて自分も同じ道を歩むことが運命づけられている。一方、同じ学校に通う竜華寺の息子・信如は僧侶の跡継ぎとして生きる宿命を背負う。二人は互いに淡い恋心を抱きながらも、身分の違いから素直に気持ちを表せずにいる。
町の子供たちは横町組と表町組に分かれ、祭りを巡って対立している。乱暴者の長吉が率いる横町組と、裕福な正太郎の表町組。美登利は表町組、信如は長吉に頼まれて横町組につく。祭りの日、幻燈会を催した表町組が勝利を収めるが、美登利と信如の心の距離は縮まらない。
やがて美登利に髪を結う日が近づく。それは遊女としての人生の始まりを意味していた。運命を受け入れた美登利は次第に大人びていき、信如との間には越えられない壁ができてしまう。二人の純粋な初恋は、過酷な現実の前に終わりを告げる。
樋口一葉が描く、社会の底辺に生きる子供たちの心の機微と、階級社会の理不尽さが胸を打つ傑作である。