ごんぎつね
新美南吉1932年)
124,873
あらすじ — 届かなかった優しさが、心を引き裂く
いたずらばかりの小ぎつね・ごんは、兵十が病気の母親のために獲った魚やうなぎを盗んでしまう。母親が亡くなったと知ったごんは、罪悪感から毎日こっそり栗やきのこを届け始める。でも兵十はそれが誰の仕業か知らなくて――。すれ違い続ける二つの心が迎える、衝撃のラスト。
この作品のひとふみ
これは、私が小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。
新美南吉
ごんは一人ぼっちの小ぎつねで、しだの一ぱい茂った森の中に穴をほって住んでいました。
新美南吉
そうだ、兵十のおっ母(かあ)は、病気だったんだ。あの鰻(うなぎ)を食べたいと云ったにちがいない。ところが、わしがいたずらをして、鰻を取って来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせる事ができなかった。
新美南吉
ごんは、お念仏がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十の母の葬列を見送りながら、ごんは思いました。
新美南吉
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いわしを盗んで来て、兵十の家の裏口から、内へ投げ込みました。
新美南吉
ごんは毎日毎日、栗や松茸(まつたけ)を拾って来ては、兵十の家へ持って来てやりました。
新美南吉
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か。」
新美南吉
「引合わないなあ。」
新美南吉
兵十は火縄銃(ひなわじゅう)をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
新美南吉
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
新美南吉
ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
新美南吉
兵十が気がつくと、土間に栗がかためておいてありました。
新美南吉
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