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科学者とあたま
寺田寅彦(1933年)
約10分
3,811字
あらすじ — 「頭がよすぎる」ことが科学の敵になる——物理学者が説く逆説的な知恵
物理学者・寺田寅彦が「科学者には頭がよくなければならない」と「頭が悪くなければならない」という二つの矛盾する命題を解き明かす。頭のいい人が陥る罠と、愚直さの中にある発見の可能性。学問だけでなく、仕事や人生にも通じる短くて深いエッセイ。
この作品のひとふみ
「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない」これは普通世人の口にする一つの命題である。これはある意味ではほんとうだと思われる。しかし、一方でまた「科学者はあたまが悪くなくてはいけない」という命題も、ある意味ではやはりほんとうである
寺田寅彦
頭のいい人は、言わば富士のすそ野まで来て、そこから頂上をながめただけで、それで富士の全体をのみ込んで東京へ引き返すという心配がある。富士はやはり登ってみなければわからない
寺田寅彦
頭の悪い人足ののろい人がずっとあとからおくれて来てわけもなくそのだいじな宝物を拾って行く場合がある
寺田寅彦
頭のいい人は見通しがきくだけに、あらゆる道筋の前途の難関が見渡される。そのためにややもすると前進する勇気を阻喪しやすい
寺田寅彦
科学の歴史はある意味では錯覚と失策の歴史である。偉大なる迂愚者の頭の悪い能率の悪い仕事の歴史である
寺田寅彦
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