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思い出の記
小泉節子(1908年)
約78分
31,251字
あらすじ — 異国の魂が日本に恋した物語
明治の日本に降り立った西洋人ヘルン。古き日本の面影を求めて出雲から東京へと移り、日本文化に惚れ込み、怪談などの名作を生み出していく。妻の目を通して描かれる、異国人が見つけた日本への深い愛情と創作の秘密。時代を超えて響く、文化への情熱の物語です。
この作品のひとふみ
遠い外国で便り少い独りぽっちとなって一時は随分困ったろうと思われます。
小泉節子
辺鄙で不便なのをも心にかけず、俸給も独り身の事であるから沢山は要らないから、赴任したようでした。
小泉節子
しかし、ヘルンは辺鄙なところ程好きであったのです。東京よりも松江がよかったのです。日光よりも隠岐がよかったのです。
小泉節子
極正直者でした。微塵も悪い心のない人でした。女よりも優しい親切なところがありました。ただ幼少の時から世の悪者共に苛められて泣いて参りましたから、一国者で感情の鋭敏な事は驚く程でした。
小泉節子
箱根あたりの、何から何まで行き届いた西洋人に向く宿屋よりも、こんなのがかえって気に入りました。
小泉節子
色々の虫が鳴いて居るのです。山が虫の声になってしまって居るようで、それでしんとして淋しうございました。
小泉節子
『私あの有様見ました、心痛いです。今日もう面白くないです。もう切るないとあなた頼み下され』
小泉節子
『あなたどう思いますか』などと申しました。
小泉節子
私この小泉八雲、日本人よりも本当の日本を愛するです
小泉節子
美しい勇気と、如何に正直の心だと云うので、ひどく賞めていました
小泉節子
『私の好きの遊び、あなたよく知る。ただ思う、と書くとです。書く仕事あれば、私疲れない、と喜ぶです。書く時、皆心配忘れるですから、私に話し下され』
小泉節子
こんな時には私はいつもあの美しいシャボン玉をこわさぬようにと思いました。そう思うから叱られても腹も立ちませんでした。
小泉節子
面白い時には、世界中が面白く、悲しい時には世界中が悲しい
小泉節子
『小泉八雲、日本人よりも本当の日本を愛するです』
小泉節子
私死にましたの知らせ、要りません。若し人が尋ねましたならば、はああれは先頃なくなりました。それでよいです
小泉節子
桜の花の返り咲き、長い旅の夢、松虫は皆何かヘルンの死ぬ知らせであったような気が致しまして、これを思うと、今も悲しさにたえません。
小泉節子
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