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……彼女がもし生きていたならば、今はもうどんなに美しい女になっていたことだろう。
堀辰雄「風立ちぬ」
背景解説
「もし生きていたら」という仮定法が、もう取り返しのつかない現実を突きつけてくる。成長した節子の姿を想像する「私」。でもそれは永遠に実現しない未来。この一文には、喪失の痛みと、それでも愛し続ける心が詰まってる。読むたびに胸が痛くなる名文。
もし生きていたら――その「もし」が一番つらい。
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『風立ちぬ』の他のひとふみ
風立ちぬ、いざ生きめやも。
堀辰雄
お前はその風の中に何かしら人間の力では遂に到達し得ない或る楽天的なものを嗅ぎ出しているようであった。
堀辰雄
私達はそんな幸福の中にいつまでもいた。
堀辰雄
私達はいまこそあらん限りの力で生きようとしなければならないのだ。
堀辰雄
それらの幸福は、それが最も壊れやすいもので出来ているように見えながらも、どんな物の力でも打ちくだけそうになかった。
堀辰雄
お前、私がこうしていると何をしているように見える? ……死の影の谷を歩いているように見えるかしら?
堀辰雄
冬が来ていた。あの鋭い冬が――
堀辰雄
私は生きている。――そうだ、それだけで充分じゃないか。
堀辰雄
幸福というものは、一方で何かが欠けていることが必要なんだ。
堀辰雄
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