私はもうこの世にはいないでしょう。とっくに死んでいるでしょう。
夏目漱石こころ」(1914)
それよりもむしろ、自分で鼻を気にしているということを、人に知られるのが嫌だったからである。
芥川龍之介」(1916)
私は、お前方から指一本指される身じゃあない。
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
現実の世界が全く身に合わなく思われてくる。
梶井基次郎Kの昇天」(1926)
私は思い返した。自分と彼等との間の、あの厭わしい溝は速くおおい埋めて、美しい花園をきっと栄えさせて見せる!
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
変な言い方ですが、この殺人事件は、犯人と被害者と同意の上で行われたのです。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
毛をもって装飾されるべき顔がつるつるしてまるでやかんのようだ。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
「厨子王」という叫びが女の口から出た。二人はぴったり抱き合った。
森鷗外高瀬舟」(1916)
目に見えているものが、いっとう神秘である。
中井正一美学入門」(1941)
その家を畑ごとお前にやるから、早速行って住むが良い。今頃は丁度家の周りに、桃の花が一面に咲いているだろう。
芥川龍之介杜子春」(1920)
こんな処にいるけれど、世帯持は上手なのよ。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
つくづく自動車はいやだ。今日はすんでの事に殺されるところさ。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
一円九十銭の日当の中から、日に、五十銭の米を二升食われて、九十銭で着たり、住んだり、べらぼうめ!
葉山嘉樹セメント樽の中の手紙」(1926)
私は、今夜、殺される。殺されるために走るのだ。
太宰治走れメロス」(1940)
とほい空でぴすとるが鳴る。またぴすとるが鳴る。
萩原朔太郎月に吠える」(1917)