母は私にも別れの言葉もいうひまもなかったのか、それきり私は会えなかった。
室生犀星幼年時代」(1919)
人と接触をせずに奥に引き入ってばかりいることも、気高いようであまり感じのいいものではない。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(26 常夏)」(1914)
文学を専門的にまでやる人で長寿と幸福を二つとも揃って得ている人は少ない。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(17 絵合)」(1914)
なんという、さびしい景色だろうと、人魚は思いました。
小川未明赤い蝋燭と人魚」(1921)
私はそういうものを身近に見て、素直に死にたいと思う。
岡本かの子老妓抄」(1938)
私は、できることなら京都から逃げ出して誰一人知らないような街へ行ってしまいたかった。
梶井基次郎檸檬」(1925)
道徳の根本概念は我と物でなく、我と汝である。
三木清哲学入門」(1940)
私は、今夜、殺される。殺されるために走るのだ。
太宰治走れメロス」(1940)
へべれけに酔っ払いたいなあ。そうして何もかも打ち壊して見たいなあ。
葉山嘉樹セメント樽の中の手紙」(1926)
ただその犯罪の名を言って聞かせるだけです。
芥川龍之介河童」(0)
私は思い返した。自分と彼等との間の、あの厭わしい溝は速くおおい埋めて、美しい花園をきっと栄えさせて見せる!
宮本百合子貧しき人々の群」(1916)
えらい駆け落ちをしてしまったという悔いが一瞬あった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
つくづく自動車はいやだ。今日はすんでの事に殺されるところさ。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
どんな意気地なしのやつでものどから血が出るまでは叫ぶんですよ。
宮沢賢治セロ弾きのゴーシュ」(1934)