精神病院の患者第二十三号が語る奇怪な体験記。三年前、上高地で登山中の男は濃霧の中で河童を発見し、それを追いかけているうちに穴に落ちて河童の国へと迷い込む。目覚めると河童たちに囲まれ、医者のチャックに治療を受けた後、「特別保護住民」として河童の国で生活することになる。
河童の国は人間社会と似通った文明を持ちながらも、価値観は正反対である。河童は皮膚の色を周囲に合わせて変えることができ、着物を着ずに腹部の袋に物を収納する。彼らは人間が真面目に考える正義や人道を滑稽がり、人間が滑稽と思うことを真面目に捉える奇妙な習性を持つ。
男は漁師のバッグや医者のチャック、硝子会社社長のゲエルらと親交を深め、河童の言語を覚えながら彼らの風俗習慣を観察していく。しかし河童の国での体験を語る男は今や精神病院の患者となり、話を聞く者に対して最後には「悪党め!」と激しく罵倒するのであった。芥川龍之介による痛烈な人間社会批判の寓話である。