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弓というものがどんな物であったか、それも思い出せぬ。
中島敦「名人伝」
背景解説
人生をかけて極めた弓を、最後には忘れてしまう。これは老いの悲劇なのか、それとも究極の悟りなのか。中島敦はどちらとも言わない。その曖昧さが恐ろしく美しい。
極めて、超えて、忘れる。これが「道」の果てなのか。
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『名人伝』の他のひとふみ
名人紀昌は終に弓を手にしなくなった。
中島敦
射之射ではなく、不射之射でなければならぬ。
中島敦
紀昌は的を見ることと瞬きをしないこととを学んだ。それだけの修行に三年かかった。
中島敦
弓?と老人は笑う。
中島敦
ああ、夫子が、——古今無双の射の名人たる夫子が、弓を忘れ果てられたとや?
中島敦
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