僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?――というのは絶えずまはっている半透明の歯車だった。
芥川龍之介歯車」(1927)
冷淡な態度を取れる者はあまりなさそうなのに源氏はかえって失望を覚えた。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(06 末摘花)」(1914)
それから、また元のところに帰って、こっくりこっくり眠り始めました。
新美南吉飴だま」(1943)
草花の一枝を枕元に置いて、それを正直に写生していると、造化の秘密が段々分って来るような気がする。
正岡子規病床六尺」(1902)
幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。
太宰治女生徒」(1939)
自分は神様から眼あきにしてやると言われてもお断りしたであろう
谷崎潤一郎春琴抄」(1933)
あなたが産んだという賢一郎は二十年も前に築港で死んでいる。
菊池寛藤十郎の恋」(1919)
もう、どうでもいいという、勇者に似つかわしくない投げやりな根性が、心の隅に巣食った。
太宰治走れメロス」(1940)
母ちゃん、目に何か刺さった。抜いて、早く早く
新美南吉手袋を買いに」(1943)
でも、あなたは、あなたは、私を知りますまい!
泉鏡花外科室」(1895)
俺たちに父親があるものか、あればあんな苦労はしていない。
菊池寛藤十郎の恋」(1919)
俺たちには、俺たちしか味方がねえんだな。初めて分かった
小林多喜二蟹工船」(1929)
その水晶の笛のような声に、嘉十は目をつぶって震え上がりました。
宮沢賢治やまなし」(1923)
東と西が出会い、互いに慰め合うことができるのだろう。
岡倉天心茶の本」(1906)
「いき」は「浮かみもやらぬ、流れのうき身」という「苦界」にその起原をもっている。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)