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ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。
新美南吉「ごんぎつね」
背景解説
物語の最後の一文。撃たれて死にかけているごんが、兵十の「お前だったのか」という言葉に、目を閉じたまま静かにうなずく。やっと気持ちが通じた。でもそれは死ぬ瞬間だった。この救いと絶望が同時に来る感じ、もう言葉にならない。
伝わった瞬間が、失われる瞬間だった。
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『ごんぎつね』の他のひとふみ
これは、私が小さいときに、村の茂平(もへい)というおじいさんからきいたお話です。
新美南吉
ごんは一人ぼっちの小ぎつねで、しだの一ぱい茂った森の中に穴をほって住んでいました。
新美南吉
そうだ、兵十のおっ母(かあ)は、病気だったんだ。あの鰻(うなぎ)を食べたいと云ったにちがいない。ところが、わしがいたずらをして、鰻を取って来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせる事ができなかった。
新美南吉
ごんは、お念仏がすむまで、井戸のそばにしゃがんでいました。兵十の母の葬列を見送りながら、ごんは思いました。
新美南吉
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いわしを盗んで来て、兵十の家の裏口から、内へ投げ込みました。
新美南吉
ごんは毎日毎日、栗や松茸(まつたけ)を拾って来ては、兵十の家へ持って来てやりました。
新美南吉
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か。」
新美南吉
「引合わないなあ。」
新美南吉
兵十は火縄銃(ひなわじゅう)をばたりと、とり落しました。青い煙が、まだ筒口から細く出ていました。
新美南吉
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
新美南吉
兵十が気がつくと、土間に栗がかためておいてありました。
新美南吉
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