こうなれば、もう誰も哂(わら)うものはないにちがいない。
芥川龍之介
背景解説
主人公・内供は長い鼻がコンプレックスで、ずっと周りから笑われてきた。やっと鼻を短くする治療に成功して、『これでもう誰にも笑われない!』って確信する場面なんだけど、ここが実は物語の転機になるんですよ。
でも、その後に内供を襲う想外な悲劇が、人生で本当に大事なものが何かを気付かせることになる——
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云わば細長い腸詰めのような物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下っているのである。
芥川龍之介
内供は実にこの鼻によって傷つけられる自尊心のために苦しんだのである。
芥川龍之介
それよりむしろ、自分で鼻を気にしていると云う事を、人に知られるのが嫌だったからである。
芥川龍之介
あの鼻では誰も妻になる女があるまいと思ったからである。
芥川龍之介
内供の自尊心は、妻帯と云うような結果的な事実に左右されるためには、余りにデリケイトに出来ていたのである。
芥川龍之介
内供は人を見ずに、ただ、鼻を見た。――しかし鍵鼻(かぎばな)はあっても、内供のような鼻は一つも見当らない。
芥川龍之介
それが鼻だったら、どのくらい自分は心細くなくなるだろうと思った。
芥川龍之介
内心では勿論弟子の僧が、自分を説伏(ときふ)せて、この法を試みさせるのを待っていたのである。
芥川龍之介
内供のそう云う策略をとる心もちの方が、より強くこの弟子の僧の同情を動かしたのであろう。
芥川龍之介
それは分っても、自分の鼻をまるで物品のように取扱うのが、不愉快に思われたからである。
芥川龍之介
前にはあのようにつけつけとは哂わなんだて。
芥川龍之介
人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬける事が出来ると、今度はこっちで何となく物足りないような心もちがする。
芥川龍之介
ほとんど、忘れようとしていたある感覚が、再び内供に帰って来たのはこの時である。
芥川龍之介
――こうなれば、もう誰も哂(わら)うものはないにちがいない。
芥川龍之介
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