その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終ったような気がしました。最も強く明治の影響を受けた私どもが、その後(あと)に生き残っているのは必竟(ひっきょう)時勢遅れだという感じが烈(はげ)しく私の胸を打ちました。
夏目漱石こころ
背景解説
明治天皇が亡くなった瞬間、主人公は気づいちゃうんですよ—自分たちって、その時代の空気をめいっぱい吸収した世代で、今さら新しい時代に適応できない『化石』なんじゃないか、って。つまり、時代の波に乗り遅れた自分たちが生きてる意味って本当にあるのか?っていう、めちゃくちゃ重い問いが心に刺さる瞬間なんです。
この絶望感が、主人公を最後にどんな選択へと追い詰めていくのか—その先にあるのは、驚くほど現代的な『自分の存在価値』への葛藤なんです。
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こころ』の他のひとふみ
私はなぜ先生に対してだけこんな心持が起るのか解らなかった。それが先生の亡くなった今日になって、始めて解って来た。
夏目漱石
傷ましい先生は、自分に近づこうとする人間に、近づくほどの価値のないものだから止せという警告を与えたのである。
夏目漱石
人間を愛し得る人、愛せずにはいられない人、それでいて自分の懐に入ろうとするものを、手をひろげて抱き締める事のできない人、――これが先生であった。
夏目漱石
私は淋しい人間です
夏目漱石
つまり卒業はお前に取ってより、このおれに取って結構なんだ。解ったかい
夏目漱石
ああ、ああ、天子様もとうとうおかくれになる。己(おれ)も……
夏目漱石
私はこんな風(ふう)にして生きて来たのです。始めてあなたに鎌倉(かまくら)で会った時も、あなたといっしょに郊外を散歩した時も、私の気分に大した変りはなかったのです。私の後ろにはいつでも黒い影が括(く)ッ付(つ)いていました。
夏目漱石
私は私のできる限りこの不可思議な私というものを、あなたに解らせるように、今までの叙述で己れを尽したつもりです。
夏目漱石
この手紙があなたの手に落ちる頃には、私はもうこの世にはいないでしょう。とくに死んでいるでしょう。
夏目漱石
学問をさせると人間がとかく理屈っぽくなっていけない
夏目漱石
小供に学問をさせるのも、好し悪しだね。せっかく修業をさせると、その小供は決して宅へ帰って来ない。これじゃ手もなく親子を隔離するために学問させるようなものだ
夏目漱石
どうせ死ぬんだから、旨(うま)いものでも食って死ななくっちゃ
夏目漱石
憐れな私は親孝行のできない境遇にいた。
夏目漱石
私が死のうと決心してから、もう十日以上になりますが、その大部分はあなたにこの長い自叙伝の一節を書き残すために使用されたものと思って下さい。
夏目漱石
私は妻には何にも知らせたくないのです。妻が己れの過去に対してもつ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたいのが私の唯一の希望なのですから
夏目漱石
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