上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。
芥川龍之介羅生門」(1915)
新しくせねばならぬと思うところの旧いものは、未練気なく斥けてしまわねばならぬのである。
幸田露伴努力論」(1912)
武蔵野の美といった、美というよりむしろ詩趣といいたい、そのほうが適切と思われる。
国木田独歩武蔵野」(1898)
私は本能的に感じた、私がもし生きるためには一日一食で十分だというのが発見されたら、人々は二食とることはなくなるだろう。
ソロー森の生活」(1854)
いくかへり行きかふ秋を過ごしつつ浮き木に乗りてわれ帰るらん
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(18 松風)」(1914)
「いき」は媚態でありながらなお異性に対して一種の反抗を示す強味をもった意識である。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
では、俺が引き剥ぎをしようと恨むまいな。俺もそうしなければ、餓死する体なのだ。
芥川龍之介羅生門」(1915)
ああ、なんという骨の折れる職業をおれは選んでしまったんだろう。
フランツ・カフカ変身」(0)
腕のある人が、正しい道を踏んで富を積むのが、何で悪かろう。
下村湖人論語物語」(1938)
かかる生きた眼によって見る光が、初めて明るい光、暗い光、燃える紅、しみ入る大空の自由の青さを見ることができるのである。
中井正一美学入門」(1941)
侍はそれを舟のへりに乗せ、刀でぱちんと二つに割りました。
新美南吉飴だま」(1943)
なんという、さびしい景色だろうと、人魚は思いました。
小川未明赤い蝋燭と人魚」(1921)
ああ、そのときのお前の顔色の、そしてその唇の色までも、なんと蒼ざめていたことったら!
堀辰雄風立ちぬ」(1938)
猫、猫、猫、猫、猫、猫、猫。どこを見ても猫ばかりだ。
萩原朔太郎猫町」(1935)