あたかもくたびれたる人のごとく仰臥してありたり。
柳田国男遠野物語」(1910)
悲しみ、虚無感、諦念人生に疲れたとき、存在の意味を問い直したいとき
「こ、こ、殺される前に、こっちから殺してやるんだ」どもりがブッきら棒に投げつけた。
小林多喜二蟹工船」(1929)
決意, 怒り, 絶望圧倒的な苦しみと不公正に直面して、最後の抵抗を示したいとき
そうだ、兵十のおっ母(かあ)は、病気だったんだ。あの鰻(うなぎ)を食べたいと云ったにちがいない。ところが、わしがいたずらをして、鰻を取って来てしまった。だから兵十は、おっ母にうなぎを食べさせる事ができなかった。
新美南吉ごんぎつね」(1932)
後悔、罪悪感自分のせいで誰かを傷つけたと気づいたとき
戒めは破られた。 しかし丑松の心は 不思議に晴れやかであった。
島崎藤村破戒」(1906)
解放重荷を下ろした瞬間
今の己が残りの人間の心を 失えば、恐らく獣としての 己の中に完全に 沈んでしまうであろう。
中島敦山月記」(1942)
恐怖自分が変わっていく不安を感じたとき
では、己が引剥をしようと 恨むまいな。 己もそうしなければ、 饑死をする体なのだ。
芥川龍之介羅生門」(1915)
決意開き直るとき
君、あの女には、もう返したのか 「いいや」 「いつまでも借りておいてやれ」
夏目漱石三四郎」(1908)
切なさ、逆説的な喜び恋する相手との関係を深めたいとき、純粋な気持ちを複雑に感じるとき
『ああ、実に! なんという汚らわしい事だろう! いったい、いったいおれが……いや、これは無意味(ノンセンス)だ、これは愚にもつかぬことだ!』
ドストエフスキー罪と罰」(0)
自己嫌悪と葛藤老婆の家から出た直後、自分の犯行計画に気づいて苦しむとき
若者達は花と散ったが、同じ彼等が生き残って闇屋(やみや)となる。
坂口安吾堕落論」(1947)
皮肉、幻滅、深い悲しみ理想主義が現実によって打ち砕かれるのを目撃したとき
私死にましたの知らせ、要りません。若し人が尋ねましたならば、はああれは先頃なくなりました。それでよいです
小泉節子思い出の記」(1908)
潔さ, 静寂への憧憬自分の死後、周囲が悲しむことを望まないとき
不良とは、 優しさの事ではないかしら。
太宰治斜陽」(1947)
発見人の本質について考えるとき
彼等は女心の変り易さを知らなかったわけではなく、知りすぎていたので、こういう禁止項目を案出に及んだまでであった。
坂口安吾堕落論」(1947)
怒り、諦観権力者の本音を知りたいとき、支配構造の矛盾に気づいたとき
どこへ行くんだか分らない。ただ波の底から焼火箸(やけひばし)のような太陽が出る。
夏目漱石夢十夜」(1908)
不安、虚無感人生の目的を見失ったとき、先の見えない状況に直面したとき
俺は俺に間違いないじゃないか。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
開き直り、決意自分が何者であるかわからなくなったとき、それでも自分は自分であると確認したいとき
君よ、つよく生きよ。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
激励自分の道を信じたいとき
鬼が島の鬼と云うのは、角のある為にかうかう云う鬼が島に住んでいる、人のいい鬼ばかりであった。
芥川龍之介桃太郎」(1924)
切なさ、憤り見た目だけで判断されることの理不尽さを感じるとき
ここにのみは軽く塵たち紅き物いささかひらめきて一村の緑に映じたり。
柳田国男遠野物語」(1910)
驚き, 美しさへの感動日常から非日常へ足を踏み入れたとき
私はその時一心に称名を唱えておりましたから。
泉鏡花高野聖」(1900)
安堵信念が自分を守ってくれたとき
里見さんを描いちゃ、だれが描いたって、間が抜けてるようには描けませんよ
夏目漱石三四郎」(1908)
切なさ, 悔恨失ってしまった大切な人への想いが消えないとき
一体十五六の少女の気持と云うものは、肉親の親か姉妹ででもなければ、なかなか分りにくいものです。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
困惑, 不安, 問い相手を本当に理解できないことに気づくとき