私はこの子を銭湯に連れて行きはだかにして抱き上げて、あんまり小さく醜く痩せているので、凄しくなって、おおぜいの人の前で泣いてしまった事さえございました。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
悲しみ、絶望貧困と育児放棄に苦しむとき
思い切って床屋へ行った。そのあくる日は日曜である。
夏目漱石三四郎」(1908)
決意、覚悟失恋から立ち直ろうと決めた時に
問題の大小をも弁(わきま)えず、その力を用いるところ当(とう)を失えりという人あらば如何(いかん)。
柳田国男遠野物語」(1910)
孤独自分の未熟さを自覚しているのに行動せざるを得ないとき
ここにのみは軽く塵たち紅き物いささかひらめきて一村の緑に映じたり。
柳田国男遠野物語」(1910)
驚き, 美しさへの感動日常から非日常へ足を踏み入れたとき
「その剃刀を抜いてくれ。己(おれ)は早く死にたいのだ。」と云った。
森鷗外高瀬舟」(1916)
絶望、懇願苦しみから解放されたいと願う人に向き合うとき
二十三年の弱点が一度に露見したような心持ちであった
夏目漱石三四郎」(1908)
自己否定, 絶望感自分の人生を否定されたと感じるとき
ほんとうのさいわいは 一体何だろう
宮沢賢治銀河鉄道の夜」(1934)
問い幸せって何だろうと考えるとき
そうだ、一度にひと身上いるんだ
ドストエフスキー罪と罰」(0)
怒りわずかな報酬では満足できず、人生を大きく変えたいという切迫した願いを抱いているとき
自分で自分の馬鹿を承知しているほど尊(たっ)とく見える事はない。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
悟り、自覚、謙虚さ自分の愚かさに気づいたとき、人生に迷っているとき
私という男は悪い癖で、カフェに入るとどうも長尻(ながっちり)になる。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
自己認識、虚無感人生に目的を失い、日々を無為に過ごしているとき
人間は吾身が怖ろしい悪党であると云う事実を徹骨徹髄に感じた者でないと苦労人とは云えない。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
恐怖、覚悟、決意自分の本質と向き合いたいとき、本当の成長を求めるとき
「臍(へそ)の奥だよ」
夏目漱石夢十夜」(1908)
神秘性, 不気味さ, 驚き現実と非現実の境界が曖昧になるとき
憐れな私は親孝行のできない境遇にいた。
夏目漱石こころ」(1914)
孤独, 切なさ, 悲しみ努力しても報われない時に, 葛藤の中で身動きが取れない時に
西洋の文明は積極的、進取的かも知れないがつまり不満足で一生をくらす人の作った文明さ
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
問い社会的成功や外的な達成だけを求めているとき
金は何度もなくなった。 しかし蝶子のど根性は なくならなかった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
根性何度でも立ち上がりたいとき
スワは蛇になった、と信じた。蛇になって滝壺の底を泳ぎ廻っている。
太宰治魚服記」(1933)
幻想、悲しみ現実から逃げ出したくて、別の何かになりたいと思うとき
慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル
宮沢賢治雨ニモマケズ」(0)
静寂、穏やかさ、達観人生の迷いや葛藤を感じているとき
友達として清く附き合うのと、誘惑されて又ヒドイ目に遭わされるのと、孰方(どっち)がよくって?―――あたし今夜は譲治さんを脅迫するのよ
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
誘惑, 支配欲, 悪意の喜び相手が自分に逆らおうとするとき
些細なことが私達を慰める。何故といふに些細なことが私達を悲ませるから。
パスカルパスカルの言葉」(1943)
共感小さなことで落ち込んだり元気が出たりするとき
自分一人でさえ断れそうな、この細い蜘蛛の糸が、どうしてあれだけの人数の重みに堪える事が出来ましょう。
芥川龍之介蜘蛛の糸」(1918)
恐怖自分の救いが危機に瀕しているのを知ったとき