人間てものあ体(てい)の善(い)い泥棒だぜ
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
怒り, 不公正への抗議, 無力感労働搾取や不正義に怒りを感じたとき
杜子春は又元の大金持になりました。するとどうでしょう。今まで眉をひそめていた、洛陽の都の人達は、急にいそいそと御世辞を云い始めました。
芥川龍之介杜子春」(1920)
皮肉、失望人間の本性を見せつけられて幻滅するとき
嘘こけ! そんだったら、俺なんて社長になってねかならないべよ
小林多喜二蟹工船」(1929)
怒り, 諦観支配者の嘘に気づいたとき、搾取に気づいたとき
私はこの世に生れた以上何かしなければならん、といって何をして好いか少しも見当がつかない
夏目漱石私の個人主義」(1914)
共感将来の方向性が見えず不安なとき
もう人間は愛想がつきました。どうか私を弟子にして下さい。
芥川龍之介杜子春」(1920)
絶望、決意人間関係に疲れ果てて、全てを捨てたくなるとき
私を殴れ。 ちから一ぱいに頬を殴れ。
太宰治走れメロス」(1940)
切なさ友情について考えるとき
いくら功徳になっても訓戒になっても、きたない者はやっぱりきたないものだから
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
諦観, 虚無感, 自嘲努力しても変わらない現実に直面したとき
嗚呼、余は此書を見て始めて我地位を明視し得たり。恥かしきはわが鈍(にぶ)き心なり。
森鷗外舞姫」(1890)
悔悟,自覚,切なさ恋人の手紙を読んで、自分の無神経さに気づいたとき
私はこんな風(ふう)にして生きて来たのです。始めてあなたに鎌倉(かまくら)で会った時も、あなたといっしょに郊外を散歩した時も、私の気分に大した変りはなかったのです。私の後ろにはいつでも黒い影が括(く)ッ付(つ)いていました。
夏目漱石こころ」(1914)
孤独, 絶望自分の人生が変わらない苦しみを感じたとき、誰かとの関係が表面的に見えるとき
最大の不幸は、理論が手腕を超過した時である。
レオナルド・ダ・ヴインチレオナルド・ダ・ヴインチの手記」(1914)
実践の重要性考えすぎて動けなくなっているとき
人間は大概似たもんだ。腹が立てば喧嘩の一つぐらいは誰でもするだろうと思ってたが、この様子じゃめったに口も聞けない、散歩も出来ない。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
不満、窮屈さ理想と現実のギャップに直面し、自由が制限されることに気づいたとき
面白い時には、世界中が面白く、悲しい時には世界中が悲しい
小泉節子思い出の記」(1908)
没入、感情移入ヘルンの人間性の本質を理解したいとき、感情的に揺さぶられたいとき
ああここにおれの進むべき道があった! ようやく掘り当てた!
夏目漱石私の個人主義」(1914)
解放感長い迷いの末に自分の道を見つけたとき
子狐の手は、牡丹(ぼたん)の花のようにまっかでした。雪をすくったので、ぼたんの花のようにまっかになったのです。
新美南吉手袋を買いに」(1943)
可愛さ、温かさ小さな子供の無邪気さに心が温まるとき
その檸檬の色彩は ガチャガチャした色の階調を ひっそりと紡錘形の中へ 吸収してしまって
梶井基次郎檸檬」(1925)
感嘆美しいものに心を奪われたとき
「めおとで食べたら 御利益がありまっせ」 と言われて、二人は善哉を頼んだ。 甘い善哉が、 二人の口に沁みた。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
幸福小さな幸せを噛みしめるとき
努力して努力する、それは眞のよいものでは無い。努力を忘れて努力する、それが眞の好いものである。
幸田露伴努力論」(1912)
ハッとするがんばりすぎて疲れたとき
隣の広間の床に据(す)えてある置時計が次の刻(とき)を打つまでには、きっと悟って見せる。悟った上で、今夜また入室(にゅうしつ)する。そうして和尚の首と悟りと引替(ひきかえ)にしてやる。
夏目漱石夢十夜」(1908)
決意侮辱を受けた直後、絶望的な状況で覚悟を決めるとき
私はその時一心に称名を唱えておりましたから。
泉鏡花高野聖」(1900)
安堵信念が自分を守ってくれたとき
何だか大変小さく見えた。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
孤独、郷愁、後悔大切な人との別れが現実になったとき