自然はやはり、その恋人にのみ真心を打ち明けるものである。
寺田寅彦科学者とあたま」(1933)
心にもない歎息をしながら、着がえをして、なお小さい火入れを袖の中へ入れて香をしめていた。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(31 真木柱)」(1914)
何という美しい、何というおっとりした声なんでしょう。
新美南吉手袋を買いに」(1943)
私は生まれて五十年、人の金を一銭でも借りたことはない
福沢諭吉福翁自伝」(1899)
男は化粧した女のような白い顔をしているものではないのに、若い玉鬘の心はそれを軽蔑した。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(29 行幸)」(1914)
この世界に、論理の通らない世界のあること。
中井正一美学入門」(1941)
そのとたん、私たちは同時に「アッ」と声を立てた。明るくなった部屋の片隅には、女の死骸が横たわっているのだ。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
俺はお前を本当の美しい女にするために、刺青の中へ俺の魂を打ち込んだのだ。
谷崎潤一郎刺青」(1910)
こうなれば、もう誰も笑う者はないに違いない。
芥川龍之介」(1916)
僕はお母さんが、本当に幸せになるなら、どんなことでもする。
宮沢賢治銀河鉄道の夜」(1934)