この胸を灼く悲しみを、 誰かに訴えたいのだ。
中島敦山月記」(1942)
孤独誰にも分かってもらえないとき
暖かな日の色に染まっている蜜柑が 五つ六つ、汽車を見送った弟たちの上へ ばらばらと空から降ってきた。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
希望何気ない瞬間に心を動かされたとき
弓というものがどんな物であったか、それも思い出せぬ。
中島敦名人伝」(1942)
衝撃、悟り何かに執着しすぎている自分に気づいたとき
あたかもくたびれたる人のごとく仰臥してありたり。
柳田国男遠野物語」(1910)
悲しみ、虚無感、諦念人生に疲れたとき、存在の意味を問い直したいとき
模様として縞が「いき」と看做されるのは決して偶然ではない。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
発見デザインや美学に興味があるとき
喜助は弟に頼まれた通り、剃刀を抜いた。抜くと血がどっと出て弟は死んだ。
森鷗外高瀬舟」(1916)
衝撃、悲しみ正しいことをしたはずなのに罪に問われるとき
夫の登庁を見送って了うと、それはいつも十時を過ぎるのだが、やっと自分のからだになって
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
解放感、自分らしさの回復自分の人生を取り戻したいとき
それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います
内村鑑三後世への最大遺物」(1897)
感動自分には何も残せないと感じたとき
お前たちは寒い冬の夜でも、私の足の裏をその小さい暖い手で撫でてくれた。
有島武郎小さき者へ」(1918)
温もり子どもの無邪気な優しさに触れたとき
百年待っていて下さい
夏目漱石夢十夜」(1908)
決意, 切なさ愛する者との永遠の約束を交わしたいとき
うわべは極めて何気なさ相な、この人世の裏面に、どんなに意外な、陰惨な秘密が隠されているかということを、まざまざと見せつけられた様な気がします。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
恐怖世界の本質を疑うとき、人間関係の奥底に何があるかを考えるとき
カムパネルラ、 僕たち一緒に行こうねえ
宮沢賢治銀河鉄道の夜」(1934)
友情大切な人と一緒にいたいとき
私死にましたの知らせ、要りません。若し人が尋ねましたならば、はああれは先頃なくなりました。それでよいです
小泉節子思い出の記」(1908)
潔さ, 静寂への憧憬自分の死後、周囲が悲しむことを望まないとき
僕はね、キザのようですけど、死にたくて、仕様が無いんです。生れた時から、死ぬ事ばかり考えていたんだ。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
絶望, 虚無人生の価値を問い直したいとき、深い苦悩を抱えているとき
己はお前を何処(どこ)までも追っ駈(か)け廻す積りだから
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
執着、支配欲愛する者を逃がせない切実さを感じたとき
桃太郎は如何に怠惰であるかは、この話の冒頭にも述べた通りである。
芥川龍之介桃太郎」(1924)
皮肉、痛快ヒーロー像を疑いたくなったとき
馬を駅亭の主人に借りて独り郊外の村々を巡りたり。
柳田国男遠野物語」(1910)
決意, 冒険心一人で未知の土地へ向かいたいときや、自分だけの世界を探求したいとき
おれは無論いい加減に聞いていたが、途中からこれは飛んだ所へ来たと思った。
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
後悔、絶望校長の長い説教を聞いて、自分の人生の選択を後悔したとき
人間は、二つの魂の誕生をもっているといえよう。世界がこんなに美しく、世の中がこんなに面白いものかと驚嘆する時がある。これが第一の誕生である。そしていつか、それとまったく反対に、人間がこんなに愚劣であったのか、また自分も、こんなに下らないものだったのかと驚嘆し、驚きはてる時がある。これが第二の、魂の誕生なのである。
中井正一美学入門」(1941)
魂の成長人生の残酷さや矛盾に直面したとき
涯しない花の下の涯しい虚空をみたしているものは何だろう。
坂口安吾桜の森の満開の下」(1947)
虚無、畏敬美しさの中に空虚を感じるとき