生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか。
坂口安吾堕落論」(1947)
決意人生に迷い、理想と現実のギャップに苦しんでいるとき
それでは、人びとはもう彼が何をいっているのかわからなかったのだ。自分の言葉ははっきりと、さっきよりもはっきりとしているように思えたのだが、おそらくそれは耳が慣れたためなのだろう。
フランツ・カフカ変身」(0)
孤独, 絶望必死に説明しようとしても誰にも理解されないとき
妙な偶然ですね
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
寂寥感, 運命への問い人生の偶然性や必然性について考え込みたいとき
これはきっとその注文というのは、 こっちへ来た人にいろいろ注文をつけて、 その人をたべるんだよ。
宮沢賢治注文の多い料理店」(1924)
恐怖真実に気づいた瞬間
疑い、理解し、肯定し、否定し、欲し、欲せぬ、なおまた想像し、感覚するものである。
デカルト省察」(1641)
思考の豊かさ人間の心の複雑さに向き合いたいとき
足の糸は解くに由なし。曩(さき)にこれを繰(あや)つりしは、我(わが)某(なにがし)省の官長にて、今はこの糸、あなあはれ、天方伯の手中に在り。
森鷗外舞姫」(1890)
諦観,絶望,運命への直面自分の自由だと思っていたものが、実は権力に操られていたことに気づいたとき
私はまさしくただ思惟するもの、言い換えれば、精神、すなわち霊魂、すなわち悟性、すなわち理性である
デカルト省察」(1641)
自己の本質自分とは何かを突き詰めて考えたいとき
ただもう、無性(むしょう)にわなをしかけてみたくなったのです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
決意子どもながらに家族を守りたいという衝動に駆られたとき
「ナオミを『偉くすること』と、『人形のように珍重すること』と、この二つが果して両立するものかどうか?―――今から思うと馬鹿げた話ですけれど、彼女の愛に惑溺して眼が眩んでいた私には、そんな見易い道理さえが全く分らなかったのです。」
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
後悔、自己欺瞞への気づき、絶望自分の矛盾した願いに気づき、それが実現不可能だったことを認識するとき
林を出て広い畑に出ると、 からりと晴れた空が頭の上に展開し、 秋の日が一面にきらめいていた。
国木田独歩武蔵野」(1898)
開放感閉塞感から抜け出したとき
名人紀昌は終に弓を手にしなくなった。
中島敦名人伝」(1942)
超越、静寂何かを極めた先にあるものを知りたいとき
もうとても黙って家の中におられない気持でした。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
焦燥, 追い詰められた感覚現状から逃げ出したいとき
ごんは、うなぎのつぐないに、まず一つ、いわしを盗んで来て、兵十の家の裏口から、内へ投げ込みました。
新美南吉ごんぎつね」(1932)
優しさ、不器用さ誰かに謝りたいけど、直接言えないとき
多くの人々は一度もほんとうの自分にめぐりあわずに死んでいっているのである。芸術家だけは、それも、ほんとうの、いい加減でない真の芸術家だけが、どんなに貧乏しても、ほんとうの自分にめぐりあって死んでいっているともいえるのである。
中井正一美学入門」(1941)
生の充実自分の生き方に迷いが生じたとき
それは、夢の様に荒唐無稽(こうとうむけい)で、非常に不気味な事柄でした。でも、その不気味さが、いいしれぬ魅力となって、私をそそのかすのでございます。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
誘惑、危険への惹かれ禁断の計画に心が揺らいでいるとき
二百文の鳥目を島へ持って行く事が出来る。この金はお上からいただいたものである。自分の物というものは、生まれてから持った事がない。それを今懐に持っている。
森鷗外高瀬舟」(1916)
切なさ、温かさ初めて自分だけのものを手にしたとき
今の己が残りの人間の心を 失えば、恐らく獣としての 己の中に完全に 沈んでしまうであろう。
中島敦山月記」(1942)
恐怖自分が変わっていく不安を感じたとき
柳吉は泣いた。 蝶子も泣いた。 しかしそれは別れの涙ではなく、 まだ一緒にいるという涙であった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
大変なのに一緒にいることを選ぶとき
太郎兵衛は笑いながら死んだ。
森鷗外最後の一句」(1915)
衝撃、悲しみ死に直面しても揺るがない人間の強さに触れたとき
選んでいれば、築土の下か、 道ばたの土の上で、 饑死をするばかりである。
芥川龍之介羅生門」(1915)
絶望追い詰められたとき