戒めは破られた。 しかし丑松の心は 不思議に晴れやかであった。
島崎藤村破戒」(1906)
解放重荷を下ろした瞬間
「ナオミを『偉くすること』と、『人形のように珍重すること』と、この二つが果して両立するものかどうか?―――今から思うと馬鹿げた話ですけれど、彼女の愛に惑溺して眼が眩んでいた私には、そんな見易い道理さえが全く分らなかったのです。」
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
後悔、自己欺瞞への気づき、絶望自分の矛盾した願いに気づき、それが実現不可能だったことを認識するとき
トロメライ、ロマチックシューマン作曲。 弾いてごらんなさい。
宮沢賢治セロ弾きのゴーシュ」(1934)
好奇心思いがけない相手から教わるとき
人間は誰でも猛獣使であり、 その猛獣に当るのが、 各人の性情だという。
中島敦山月記」(1942)
自覚自分をコントロールできないとき
人の心を疑うのは、 最も恥ずべき悪徳だ。
太宰治走れメロス」(1940)
決意誰かを信じたいとき
感動と愛情とをこめて家族のことを考えた。自分が消えてしまわなければならないのだという彼の考えは、おそらく妹の意見よりももっと決定的なものだった。
フランツ・カフカ変身」(0)
悲しみ、切なさ、諦念自分の死が家族を救う唯一の方法だと気づいたとき
たとい如何なる目を見ようとも、 如何なる人に邂逅おうとも、 決してそれは打ち明けるな。 一旦の憤怒悲哀から、 若しそれを白状するような事があったら、 その時こそお前の一生の 不幸だと思え。
島崎藤村破戒」(1906)
緊張自分のことを隠さなければならないとき
『ああ、実に! なんという汚らわしい事だろう! いったい、いったいおれが……いや、これは無意味(ノンセンス)だ、これは愚にもつかぬことだ!』
ドストエフスキー罪と罰」(0)
自己嫌悪と葛藤老婆の家から出た直後、自分の犯行計画に気づいて苦しむとき
もう人間は愛想がつきました。どうか私を弟子にして下さい。
芥川龍之介杜子春」(1920)
絶望、決意人間関係に疲れ果てて、全てを捨てたくなるとき
それは私自身に取って忘れがたない貴い記録であると同時に、恐らくは読者諸君に取っても、きっと何かの参考資料となるに違いない。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
決意自分の人生を記録に残したいと思ったとき
個性というのは一回的なもの、繰返さないもののことではないであろうか。
三木清人生論ノート」(1941)
思索,疑問自分の存在の唯一性について考えているとき
人間の一生は地獄でございまして、寸善尺魔、とは、まったく本当の事でございますね。一寸の仕合せには一尺の魔物が必ずくっついてまいります。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
諦観、切なさ、悲しみ人生の不条理に直面したとき、幸せが長く続かないと感じるとき
二人は泣きました。泣いて泣いて泣いて泣きました。
宮沢賢治注文の多い料理店」(1924)
恐怖どうしようもなくなって泣くしかないとき
どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。
宮沢賢治山越え」(1921)
希望と自信危険な状況を楽観的に解釈したいとき
こんな、うじ虫の様な生活を、続けて行く位なら、いっそのこと、死んで了った方が増しだ
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
怒り、絶望、決意自分の無価値さに直面し、人生を諦めかけたとき
哲学に入る門は到る処にある。
三木清哲学入門」(1940)
希望,開放感何かを新しく学び始めようとするとき
一体十五六の少女の気持と云うものは、肉親の親か姉妹ででもなければ、なかなか分りにくいものです。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
困惑, 不安, 問い相手を本当に理解できないことに気づくとき
よだかはどこまでも、 どこまでも、 まっすぐに空へ のぼって行きました。
宮沢賢治よだかの星」(1934)
決意もう後戻りできないとき
だが、そんなことをやってみるがいい! 彼は写真の上に坐りこんで、渡しはしない。
フランツ・カフカ変身」(0)
決意、抵抗すべてを失い続ける中で、最後に守りたいものが見つかったとき
形体以外の活動を見る能(あた)わざる者に向って己霊(これい)の光輝を見よと強(し)ゆるは、坊主に髪を結(い)えと逼(せま)るがごとく、鮪(まぐろ)に演説をして見ろと云うがごとく、電鉄に脱線を要求するがごときものである。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
怒り, 諦観, ユーモア自分の努力が報われず、他者に理解されないと感じたとき