明日もまた、同じ日が来るのだろう。 幸福は一生、来ないのだ。 それは、わかっている。 けれども、きっと来る、 あすは来る、と信じて寝るのが いいのでしょう。
太宰治女生徒」(1939)
希望明日に希望を持ちたいとき
お前、私がこうしていると何をしているように見える? ……死の影の谷を歩いているように見えるかしら?
堀辰雄風立ちぬ」(1938)
不安自分の本当の状態を聞くのが怖いとき
君よ、つよく生きよ。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
激励自分の道を信じたいとき
松野はそのとき、みんなを呼べばよかったのです。でも、彼は手がらをひとりじめにしたかったのでしょう。他人の力を借りないで、そのうたがいをはらしてみようと思いました。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
葛藤、後悔の予感自分の判断が危険かもしれないと気づくとき
同一の自己は同一の状態を繰り返すだらう。
幸田露伴努力論」(1912)
焦り毎年同じことの繰り返しだと感じるとき
生きよ堕ちよ、その正当な手順の外に、真に人間を救い得る便利な近道が有りうるだろうか。
坂口安吾堕落論」(1947)
決意人生に迷い、理想と現実のギャップに苦しんでいるとき
俺は俺に間違いないじゃないか。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
開き直り、決意自分が何者であるかわからなくなったとき、それでも自分は自分であると確認したいとき
我を救ひ玉へ、君。わが恥なき人とならんを。
森鷗外舞姫」(1890)
切なさ、絶望、哀願人生の岐路に立たされ、誰かに助けを求めたいとき
学問をさせると人間がとかく理屈っぽくなっていけない
夏目漱石こころ」(1914)
悲しみ, 断絶親と子の価値観が相容れないと感じたとき
けれども、私は偉大な破壊が好きであった。私は爆弾や焼夷弾(しょういだん)に戦(おのの)きながら、狂暴な破壊に劇(はげ)しく亢奮(こうふん)していたが、それにも拘らず、このときほど人間を愛しなつかしんでいた時はないような思いがする。
坂口安吾堕落論」(1947)
矛盾, 愛情, 覚醒死を覚悟しながらも人生の本質を問い直したいとき
僕は何だか、出来るか出来ないか分りませんけれど、一つこの事件を探偵して見たい様な気がしますよ
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
決意, 好奇心, わくわく感不可解な事件に直面し、それでも謎を解きたいと思ったとき
お志保の澄んだ眼を見る度に、 丑松は自分の嘘が 刃のように胸に突き刺さるのを 感じた。
島崎藤村破戒」(1906)
罪悪感好きな人に嘘をついているとき
どうせ死ぬんだから、旨(うま)いものでも食って死ななくっちゃ
夏目漱石こころ」(1914)
切なさ, 悲しみ死を覚悟した時に, 人生の無常さを感じた時に
柳吉は泣いた。 蝶子も泣いた。 しかしそれは別れの涙ではなく、 まだ一緒にいるという涙であった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
大変なのに一緒にいることを選ぶとき
いつまでも、いつまで経っても、夜が明けなければいい、と思いました。
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
絶望, 切なさ現実と向き合いたくないとき
鍵穴(かぎあな)の眼玉はたちまちなくなり、犬どもはううとうなってしばらく室の中をくるくる廻(まわ)っていましたが、また一声 「わん。」と高く吠(ほ)えて、いきなり次の扉に飛びつきました。
宮沢賢治山越え」(1921)
迫力、緊迫感、圧倒される感覚予測不能な事態に直面したとき
「ナオミを『偉くすること』と、『人形のように珍重すること』と、この二つが果して両立するものかどうか?―――今から思うと馬鹿げた話ですけれど、彼女の愛に惑溺して眼が眩んでいた私には、そんな見易い道理さえが全く分らなかったのです。」
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
後悔、自己欺瞞への気づき、絶望自分の矛盾した願いに気づき、それが実現不可能だったことを認識するとき
トロッコは線路を降りるように走り出した。 良平は眼を輝かせて、 両側の風景を見やった。
芥川龍之介トロッコ」(1922)
希望夢が叶った瞬間
孤独は山になく、街にある。一人の人間にあるのでなく、大勢の人間の「間」にあるのである
三木清人生論ノート」(1941)
孤独人混みの中でこそ孤独を感じるとき
でんでんむしはもうなげくのをやめました。
新美南吉でんでんむしのかなしみ」(1935)
受容、静けさ嘆いても仕方ないと悟った瞬間