優れた者が勝ち劣った者が負ける世の中で、こんな個人的な恨みを漏らすとすれば、愚か者でなければ狂人である。
芥川龍之介猿蟹合戦」(1923)
上なら、人がいたにしても、どうせ死人ばかりである。
芥川龍之介羅生門」(1915)
自分が消えてしまわなければならないのだという彼の考えは、おそらく妹の意見よりももっと決定的なものだった。
フランツ・カフカ変身」(0)
心にもない歎息をしながら、着がえをして、なお小さい火入れを袖の中へ入れて香をしめていた。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(31 真木柱)」(1914)
「いき」は「浮かみもやらぬ、流れのうき身」という「苦界」にその起原をもっている。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
道を歩いて常に見る若い美しい女、出来るならば新しい恋を為たいと痛切に思った。
田山花袋蒲団」(1907)
この痛みも、もう大きいので、参ったら、多分私は死ぬでしょう。
小泉節子思い出の記」(1908)
僕はかわいい顔はしていたかも知れないが体も心も弱い子でした。
有島武郎一房の葡萄」(1920)
私は議論をして、勝ったためしがない。
太宰治魚服記」(1933)
いったい誰が微生高を正直者などと言い出したのだ。
下村湖人現代訳論語」(1949)
願わくはこれを語って平地人を戦慄させてほしい。
柳田国男遠野物語」(1910)
呪われた意地につきまとわれているゼラール中尉を憫まずにはいられなかった。
菊池寛」(1920)
私たち、これから本当に生きられるだけ生きましょうね……
堀辰雄風立ちぬ」(1938)
おれたちは、これで、うまく行ってる方じゃないかなあ。
岸田国士紙風船」(1925)
私は愛することはなかなかできないけれど私は愛せねばならない。
倉田百三愛と認識との出発」(1921)
自分で自分の馬鹿を承知しているほど尊く見えることはない。
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
もうあとへは退けない気になっていて、再び情火を胸に燃やしながら心をこめた手紙を続いて送っていた。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(20 朝顔)」(1914)
俺の父親は俺が八歳になるまで家を外に飲み歩いていたのだ。
菊池寛藤十郎の恋」(1919)