人は高塔であった。馬は山であった。豚は丘のごとく、鶏は城楼と見える。
中島敦名人伝」(1942)
幸福を語ることがすでに何か不道徳なことであるかのように感じられるほど今の世の中は不幸に満ちているのではあるまいか。
三木清人生論ノート」(1941)
この痛みも、もう大きいので、参ったら、多分私は死ぬでしょう。
小泉節子思い出の記」(1908)
ハハハ……、二十面相は童話の中の魔法使いです。だれにでもできないことを、実行してみせるのです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
こんな月夜には、子供たちは何か夢みたいなことを考えがちでした。
新美南吉」(1943)
その水晶の笛のような声に、嘉十は目をつぶって震え上がりました。
宮沢賢治やまなし」(1923)
僕ハ彼女ヲ酔イツブシテ寝カシテシマオウトイウ底意モアッタガ、ドウシテ彼女ハソノ手ニハ乗ラナイ。
谷崎潤一郎」(1956)
指導者は全部、無学であった。常識のレベルにさえ達していなかった。
太宰治黄金風景」(1939)
誰か僕の眠っているうちにそっと絞め殺してくれるものはないか?
芥川龍之介歯車」(1927)
こうして変わらない愛をかける源氏に真心から信頼している様子に同情がされた。
紫式部(与謝野晶子訳)源氏物語(23 初音)」(1914)
わたし雷さまより光るのがいやなの。
永井荷風濹東綺譚」(1937)
もう先生に抱かれたまま死んでしまいたいような気持ちになってしまいました。
有島武郎小さき者へ」(1918)
私にもそうらしく思われて来ました。逃げて都へも行かれます。
森鷗外高瀬舟」(1916)
それから、また元のところに帰って、こっくりこっくり眠り始めました。
新美南吉飴だま」(1943)
虫が知らすとでも言うのか、何だかこう、傍見をしているすきに何か起きそうで、どうも外へ目を向けられなかった
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)