ハハハ……、二十面相は童話の中の魔法使いです。だれにでもできないことを、実行してみせるのです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
驚き自分の正体が露わになったとき
皆、畜生! ッて気でいる
小林多喜二蟹工船」(1929)
怒り不当な扱いに対して、仲間と一緒に立ち上がりたいとき
ずるけてサボるんでねえんだ。働けねえからだよ
小林多喜二蟹工船」(1929)
悲しみ, 怒り労働者が自分の限界を突きつけられたとき
人間は堕落する。義士も聖女も堕落する。それを防ぐことはできないし、防ぐことによって人を救うことはできない。人間は生き、人間は堕ちる。そのこと以外の中に人間を救う便利な近道はない。
坂口安吾堕落論」(1947)
悲しみと希望の混在自分の弱さや失敗を受け入れられず、完璧でありたいと願うとき
こんな立派な奥さんがあるのに、どうして大谷さんは、あんなに、ねえ
太宰治ヴィヨンの妻」(1947)
切なさ、悲しみ自分の人生の失敗や堕落を突きつけられたとき
「ナオミを『偉くすること』と、『人形のように珍重すること』と、この二つが果して両立するものかどうか?―――今から思うと馬鹿げた話ですけれど、彼女の愛に惑溺して眼が眩んでいた私には、そんな見易い道理さえが全く分らなかったのです。」
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
後悔、自己欺瞞への気づき、絶望自分の矛盾した願いに気づき、それが実現不可能だったことを認識するとき
喜助は弟に頼まれた通り、剃刀を抜いた。抜くと血がどっと出て弟は死んだ。
森鷗外高瀬舟」(1916)
衝撃、悲しみ正しいことをしたはずなのに罪に問われるとき
人の心を疑うのは、 最も恥ずべき悪徳だ。
太宰治走れメロス」(1940)
決意誰かを信じたいとき
それでは、人びとはもう彼が何をいっているのかわからなかったのだ。自分の言葉ははっきりと、さっきよりもはっきりとしているように思えたのだが、おそらくそれは耳が慣れたためなのだろう。
フランツ・カフカ変身」(0)
孤独, 絶望必死に説明しようとしても誰にも理解されないとき
君の絵には学問がなかった。 しかし命があった。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
感動型にはまらない何かに心を動かされたとき
それから、池の岸で、どんなことがおこったかは、しばらく読者諸君のご想像にまかせます。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
好奇心、謎めいた不安何か重大な出来事が起きたことを知りたいとき
国の言葉はその国に事物の繁多なる割合に従いて、しだいに増加し、毫(ごう)も不自由なきはずのものなり。何はさておき今の日本人は今の日本語を巧みに用いて弁舌の上達せんことを勉むべきなり。
福沢諭吉学問のすすめ」(1872)
決意自分の母語に自信が持てないとき、外国語に逃げたくなるとき
私は生れつき、世にも醜い容貌の持主でございます。これをどうか、はっきりと、お覚えなすっていて下さいませ。
江戸川乱歩人間椅子」(1925)
切なさ、自己卑下、決意自分の劣等感と向き合いたいとき、ありのままを受け入れてほしいと願うとき
けれども、私は偉大な破壊が好きであった。私は爆弾や焼夷弾(しょういだん)に戦(おのの)きながら、狂暴な破壊に劇(はげ)しく亢奮(こうふん)していたが、それにも拘らず、このときほど人間を愛しなつかしんでいた時はないような思いがする。
坂口安吾堕落論」(1947)
矛盾, 愛情, 覚醒死を覚悟しながらも人生の本質を問い直したいとき
兵十が気がつくと、土間に栗がかためておいてありました。
新美南吉ごんぎつね」(1932)
衝撃、悲しみ見落としていた真実に気づいたとき
選んでいれば、築土の下か、 道ばたの土の上で、 饑死をするばかりである。
芥川龍之介羅生門」(1915)
絶望追い詰められたとき
落葉の音と自分の足音とのほかには何の音もなく、 非常な静かさが四辺を領していた。
国木田独歩武蔵野」(1898)
静寂一人で静かな場所を歩いているとき
かかる話を聞きかかる処を見てきてのちこれを人に語りたがらざる者果してありや。
柳田国男遠野物語」(1910)
問い、違和感、共感への呼びかけ創作や表現の価値を疑われたとき
お母さん、お手々がちんちんする。お手々がちんちんする。
新美南吉手袋を買いに」(1943)
可愛さ、切なさ子供の素直な言葉に胸を打たれるとき
女の肌は月の光のように白く、水は黒曜石のようであった。
泉鏡花高野聖」(1900)
陶酔美しすぎるものに理性を失いそうになったとき