山賊はふりかえって見ましたが都が見えませんでした。ただ一面に連る桜の花があるだけでした。
坂口安吾桜の森の満開の下」(1947)
幻惑、不安現実と幻想の境が曖昧になったとき
野暮は垣根の外がまへ、三千楼の色競べ、意気地くらべや張競べ
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
かっこよさの本質を知りたいとき
有体(ありてい)なる己(おの)れを忘れ尽(つく)して純客観に眼をつくる時、始めてわれは画中の人物として、自然の景物と美しき調和を保(たも)つ。
夏目漱石草枕」(1906)
悟り、切なさ理想と現実のギャップに直面したとき
理由も分らずに 押付けられたものを 大人しく受取って、 理由も分らずに生きて行くのが、 我々生きもののさだめだ。
中島敦山月記」(1942)
諦念人生の理不尽さを感じたとき
ナオミは私が事実発狂したかと思ったようでした。彼女の顔はその時一層、どす黒いまでに真っ青になり、瞳を据えて私を見ている眼の中には、殆(ほとん)ど恐怖に近いものがありました。
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
狂気、支配への絶望愛する者によって完全に支配されてしまった自分を認識するとき
観念らしい観念は死の立場から生れる、現実或いは生に対立して思想といわれるような思想はその立場から出てくるのである
三木清人生論ノート」(1941)
畏敬死について考えずにはいられないとき
小娘はあの霜焼けの手をのばして、 窓から身体をのり出すが早いか、 窓の外の寒さに息をはずませながら、 勢いよく左右に振った。
芥川龍之介蜜柑」(1919)
決意大切な人のために必死になるとき
生れ出づる悩みを持つ者は、 その悩みの故に高い。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
希望自分の苦しみに意味を見出したいとき
されば武蔵野の美にして、 一日だも変化のない日はなかった。
国木田独歩武蔵野」(1898)
発見毎日の変化に気づきたいとき
ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキシワカリ
宮沢賢治雨ニモマケズ」(0)
決意自分の感情に流されず、相手を理解したいとき
大阪の街は どん底の二人にも優しかった。 安い飯屋の湯気の向こうに、 人間の温もりがあった。
織田作之助夫婦善哉」(1940)
温もりお金はなくても幸せを感じるとき
『今からこんなにびくびくして、もしいよいよ実行という段になったら、いったいどうするのだ?……』
ドストエフスキー罪と罰」(0)
恐怖と自己懐疑犯行計画の実行を前に、自分の弱さに気づいたとき
へつらうまい驕るまいと気を使うのは、まだ君の心のどこかに、へつらう心や驕る心が残っているからではあるまいかの。
下村湖人論語物語」(1938)
衝撃自分の謙虚さに自信を持っていたとき
ちくしょうめ、やられたんです。あいつにやられたんです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
悔しさ、怒り自分が二十面相に騙されたことを認識したとき
幸福は一夜おくれて来る。 幸福は、――
太宰治女生徒」(1939)
切なさ幸せがなかなか来ないと感じるとき
おれは逃げも隠(かく)れもせん。今夜五時までは浜の港屋に居る。用があるなら巡査(じゅんさ)なりなんなり、よこせ
夏目漱石坊っちゃん」(1906)
決意不正に立ち向かい、潔く決別を宣言したいとき
表の大通りには往来が絶えない。声高に話し合って、カラカラと日和下駄を引きずって行くのや、酒に酔って流行唄をどなって行くのや、至極天下泰平なことだ。そして、障子一重の家の中には、一人の女が惨殺されて横わっている。何という皮肉だ。
江戸川乱歩D坂の殺人事件」(1925)
無常感、虚無感日常と非日常の境界に直面したとき、世界の不条理を感じたいとき
よだかはどこまでも、 どこまでも、 まっすぐに空へ のぼって行きました。
宮沢賢治よだかの星」(1934)
決意もう後戻りできないとき
世に在ること一日ならば、一日の好人と做るを要す
新渡戸稲造自警録」(1916)
清々しさ人生を大きく変えたいけど何から始めればいいかわからないとき
好奇心は虚榮に過ぎない。私達は何かの話が出來るといふだけのことで、ある一つの事を知らうと思ふことが、よく有る。
パスカルパスカルの言葉」(1943)
自省SNSで「知ったかぶり」をしてしまったとき