何という奇妙な私の立場であろう。何という恥かしい……恐ろしい……そうして不可解な運命であろう。
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
恐怖自分の過去が精神病院の標本室に隠されていると悟ったとき
女は笑いながら、白い手をのべて、その蛇を掴んでひょいと投げた。
泉鏡花高野聖」(1900)
畏怖人間離れした存在に圧倒されたとき
簡素独立の心は王侯のさしずによって立ちはたらくのではない。天才は皇帝の臣下ではなく、その材料はごく少量をのぞいては金・銀・大理石ではない。
ソロー森の生活」(1854)
自由他人の評価や社会の基準に振り回されているとき
女の肌は月の光のように白く、水は黒曜石のようであった。
泉鏡花高野聖」(1900)
陶酔美しすぎるものに理性を失いそうになったとき
努力は一である。併し之を察すれば、おのづからにして二種あるを觀る。一は直接の努力で、他の一は間接の努力である。
幸田露伴努力論」(1912)
発見努力しても成果が出ないとき
人を殺したり家に火をつけたり、いろいろ悪事を働いた大泥坊でございますが、それでもたった一つ、善い事を致した覚えがございます。
芥川龍之介蜘蛛の糸」(1918)
希望、救い自分は駄目だと思い込んでいるとき、完全に否定されたと感じるとき
その表情はぴしゃりと心のカメラへ焼き付いてしまった。
夏目漱石草枕」(1906)
美への感動、切なさ心に深く残る美しさに出会いたいとき
海は君を呼んでいた。 そしてカンヴァスもまた 君を呼んでいた。
有島武郎生れ出づる悩み」(1918)
葛藤二つのやりたいことの間で迷うとき
「科学者になるには『あたま』がよくなくてはいけない」これは普通世人の口にする一つの命題である。これはある意味ではほんとうだと思われる。しかし、一方でまた「科学者はあたまが悪くなくてはいけない」という命題も、ある意味ではやはりほんとうである
寺田寅彦科学者とあたま」(1933)
知的好奇心頭の良さとは何かを考えたとき
美しい勇気と、如何に正直の心だと云うので、ひどく賞めていました
小泉節子思い出の記」(1908)
切なさ枯れゆく朝顔の最期の花を見つめるとき
それらの幸福は、それが最も壊れやすいもので出来ているように見えながらも、どんな物の力でも打ちくだけそうになかった。
堀辰雄風立ちぬ」(1938)
感嘆はかないものの中に強さを見出したとき
まだグレゴールはここにいて、自分の家族を見捨てようなどとは、ほんの少しだって考えてはいないのだ。
フランツ・カフカ変身」(0)
決意, 切なさ家族のために自分を犠牲にする覚悟を決めたとき
ピストルはおもちゃだったのです。さいぜんから、おもちゃのピストルにおびえて、人を呼ぶこともできなかったのです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
怒り自分がまたも騙されていたことに気づいたとき
こんなとこにおかしいね。
宮沢賢治山越え」(1921)
違和感, 戸惑い予期しない出来事に遭遇したとき
私はこの想像を熱心に続けた。
梶井基次郎檸檬」(1925)
没頭妄想が止まらないとき
我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか
森鷗外舞姫」(1890)
怒り、絶望信頼していた者に裏切られたことに気づいたとき
たった一人の寝がえりものは、三百人の命を殺すということを知らなければならない。
小林多喜二蟹工船」(1929)
怒り, 決意団結の重要性を痛感したいとき
百年待っていて下さい
夏目漱石夢十夜」(1908)
決意, 切なさ愛する者との永遠の約束を交わしたいとき
母さん狐はため息をつきました。「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら。」
新美南吉手袋を買いに」(1943)
不安、愛情大切な人を危険にさらすかもしれない決断をするとき
小字(こあざ)よりさらに小さき区域の地名は持主にあらざればこれを知らず。
柳田国男遠野物語」(1910)
孤独, 疎外感自分の居場所や認識の限界に気付いたとき