茶は芸術品であるから、その最もけだかい味を出すには名人を要する。
岡倉天心茶の本」(1906)
敬意,理解技芸の奥深さに気づいたとき
「いき」は恋の束縛に超越した自由なる浮気心でなければならぬ。
九鬼周造「いき」の構造」(1930)
解放感,自由恋愛に束縛されそうになったとき
トロッコは線路を降りるように走り出した。 良平は眼を輝かせて、 両側の風景を見やった。
芥川龍之介トロッコ」(1922)
希望夢が叶った瞬間
旅において我々は日常的なものから離れ、そして純粋に観想的になることによって、平生は何か自明のもの、既知のものの如く前提されていた人生に対して新たな感情を持つのである。
三木清人生論ノート」(1941)
発見,解放日常から離れて新しい視点を得たとき
噫、生きてゐた、私は生きてゐた!
中原中也山羊の歌」(1934)
生命力,歓喜どん底にいたのに、突然自分の生命力を実感したとき
蒲団を持ち上げるとき、よいしょ、と掛声して、はっと思った。
太宰治女生徒」(1939)
驚き,恥ずかしさ無意識に婆さんのような言葉を発した自分に気づいたとき
堪(た)えがたいほど切ないものを胸に盛(い)れて忍んでいた。
夏目漱石夢十夜」(1908)
切なさどうしようもない苦しみに耐えている状況で、その感情の正体を知りたいとき
美しい勇気と、如何に正直の心だと云うので、ひどく賞めていました
小泉節子思い出の記」(1908)
切なさ枯れゆく朝顔の最期の花を見つめるとき
海蔵は自分がはずかしくなりました。
新美南吉牛をつないだ椿の木」(1943)
恥、気づき自分の小ささに気づいた瞬間
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
宮沢賢治農民芸術概論綱要」(1926)
使命感自分だけの幸せに疑問を感じたとき
ああ、暑、暑! どうだった、譲治さん、あたしの踊るのを見ていた?
谷崎潤一郎痴人の愛」(1924)
喜び自分の成功を確認したいとき
喜助はにっこり笑った。「お奉行様にはそう仰しゃるだろうと思っていました。しかし私はこれまでの暮しに比べると、島へ行くのがどんなに楽かしれません。」
森鷗外高瀬舟」(1916)
衝撃、切なさ底辺の生活を経験して、小さな幸せに気づくとき
その皺だらけに痙攣った横顔を眺めながら、私は煙に捲かれたように茫然となっていた。今朝から私の周囲にゴチャゴチャと起って来る出来事が、何一つとして私に、新らしい不安と、驚きとを与えないものは無い……しかも、それに対する若林博士の説明が又、みるみる大袈裟に、超自然的に拡大して行くばかりで、とても事実とは思えない
夢野久作ドグラ・マグラ」(1935)
戸惑い、孤立感、現実喪失自分の身の上に起こったとは思えない事態の説明を聞かされているとき
古い道徳とどこまでも争い、 太陽のように生きるつもりです
太宰治斜陽」(1947)
希望新しい自分に生まれ変わりたいとき
もうどこへも行く先がないという意味が、おわかりになりますかな? いや、これはまだあなたにゃわかりますまいよ……
ドストエフスキー罪と罰」(0)
絶望人生の選択肢を失い、追い詰められた状況を理解してほしいとき
あいつは、その時とばあいによって、どんな手段でも考えだす知恵を持っているのです。
江戸川乱歩怪人二十面相」(1936)
恐怖二十面相の正体や能力について深く考察するとき
天行健なり。
下村湖人論語物語」(1938)
静寂,決意絶望的な状況に直面したとき
いろいろ注文が多くて うるさかったでしょう。 お気の毒でした。 もうこれだけです。
宮沢賢治注文の多い料理店」(1924)
恐怖安心させる言葉が一番怖いとき
人間というものは到底(とうてい)吾輩猫属(ねこぞく)の言語を解し得るくらいに天の恵(めぐみ)に浴しておらん動物である
夏目漱石吾輩は猫である」(1905)
諦観、孤独誰かに自分の気持ちを理解してもらえず、その無力さを感じるとき
私はこんな風(ふう)にして生きて来たのです。始めてあなたに鎌倉(かまくら)で会った時も、あなたといっしょに郊外を散歩した時も、私の気分に大した変りはなかったのです。私の後ろにはいつでも黒い影が括(く)ッ付(つ)いていました。
夏目漱石こころ」(1914)
孤独, 絶望自分の人生が変わらない苦しみを感じたとき、誰かとの関係が表面的に見えるとき